牛のアシドーシスとは|原因、評価方法、治療について徹底解説。

こんにちは、KENTAROです。
今回は、「牛のアシドーシス」というテーマでお話ししていきます。

アシドーシスは子牛で特に重要な病気です。一般的なアシドーシスの原因や評価方法、治療の目的について解説します。

子牛のアシドーシスとは

アシドーシスとは、生体内の酸塩基平衡が酸性側に傾いた状態です。

子牛の体内では、解離性の酸とその酸の塩からなる「緩衝系」とよばれる機能がはたらいています。緩衝系が存在することで、子牛体内のpHの変化が最小限にとどめられているわけですが、呼吸や代謝に異常が起こると緩衝システムが機能しなくなり、酸と塩基のバランスが崩れてしまいます。

その結果としてpHが酸性側に傾くとアシドーシス、塩基性側に傾くとアルカローシスとよばれます。

アシドーシスの原因

アシドーシスの原因は、「呼吸性」と「代謝性」に分けられます。

呼吸性アシドーシスは肺胞換気異常が原因であり、血液中の二酸化炭素(CO2)分圧の変化により特徴づけられます。

一方、代謝性アシドーシスは体内の代謝異常が原因であり、血液中の重炭酸イオン(HCO3-)濃度の変化により特徴づけられます。

実際の臨床現場では、子牛の代謝性アシドーシスはよく遭遇する病態であり、獣医師として解決しなければならない課題の一つです。というわけで今回は、代謝性アシドーシスを中心に話を進めていきたいと思います。

【代謝性アシドーシスの原因】

  • 下痢
  • 濃厚飼料の過剰摂取
  • エンドトキシンショック
  • 尿細管性アシドーシス

代謝性アシドーシスの原因は多岐にわたりますが、ほとんどの場合は上記4つです。順番に解説していきます。

下痢

下痢は、子牛の代謝性アシドーシスの原因として最も広く認識されており、特に生後28日齢までの新生子牛において重要です。

下痢の原因は、質の悪い代用乳、ウイルス、細菌、原虫性疾患など多岐にわたりますが、いずれにしても一連の代謝性変化が生じます。

【下痢による代謝性変化】

  • 脱水症に付随する血液量減少性ショック
  • 高窒素血症
  • 細胞外液の重炭酸および電解質(Na,K,Cl)の喪失

重炭酸イオンが腸管内へと喪失していく結果として、代謝性アシドーシスを生じます。

重炭酸イオンは細胞外液において乳酸を中和する緩衝能を持ちますが、これが不足することで細胞外液が酸性側に傾くというわけです。

濃厚飼料の過剰摂取

易発酵性炭水化物の過剰摂取は、慢性および急性アシドーシスの原因となります。

濃厚飼料の過剰摂取により乳酸と糖が第一胃内に貯留し、第一胃の酸度と浸透圧が上昇します。さらにこれらの代謝産物は第一位や腸管壁にダメージを与え、血液pHを低下させ、致命的な脱水症を引き起こします。

第一胃機能が充分に発達していない子牛では、糖を過剰に含む液体や家畜用飼料の摂取により、アシドーシスが起こる可能性があると考えられます。

エンドトキシンショック

エンドトキシンショックは、新生子牛における有力な代謝性アシドーシスの原因です。初乳免疫の獲得が不十分な新生子牛は、グラム陰性菌の細胞壁成分に対して極めて感受性が高くなります。

心肺機能不全やそれに伴う換気血液比の不均衡は、組織における低酸素症の原因となります。組織の酸素が不足することで好気性代謝が失われ、嫌気性代謝が主体となり、その結果として乳酸が産生されて代謝性アシドーシスに陥るわけです。

尿細管性アシドーシス

尿細管性アシドーシスは、高クロール血性代謝性アシドーシスを特徴とする疾病です。

遠位曲尿細管での水素イオン分泌不全、近位曲尿細管での重炭酸イオン吸収障害によって生じます。

尿細管性アシドーシスでは、次のような臨床所見がみられます。

  • 代謝性アシドーシスの持続
  • 代謝性の骨疾患
  • 重度の電解質異常
  • 尿石症

私の知る限りでは、牛における尿細管性アシドーシスは確認されませんでしたが、アシドーシスを示す子牛の鑑別診断として頭の片隅にでも入れておくべきだと思います。

アシドーシスを評価する方法

牛のアシドーシスは「血液検査」と「臨床症状」から評価できます。

血液検査

アシドーシスの評価方法として一般的なのが血液検査です。新生子牛の静脈血pHと重炭酸イオン濃度を測定することで診断できます。

【新生子牛の正常値】

  • 静脈血pH:7.280~7.480
  • 重炭酸イオン濃度:20~40mmol/L

新生子牛の血液pHが7.280未満あるいは重炭酸イオン濃度が20.0mmol/L未満であれば代謝性アシドーシスと診断できます。

臨床症状

代謝性アシドーシスでは、神経学的な機能不全による臨床症状が重要です。

【代謝性アシドーシス子牛の臨床症状】

  • 眼球陥没
  • 吸入反射・威嚇反射・触知反射の喪失
  • 起立困難
  • 口腔・四肢の冷感

重度のアシドーシスになると、意識障害沈鬱昏睡といった症状があらわれます。

アシドーシスの治療

アシドーシスの治療は、アルカリ化剤の投与が基本です。

獣医師が非経口的に投与できるアルカリ化剤には、酢酸・乳酸・グルコン酸・重炭酸などのナトリウムおよびカリウム塩があります。

子牛の状態によって投与量は異なりますが、基本的には静脈内持続点滴で治療します。

まとめ:子牛のアシドーシスには要注意

では、ここまでの内容をまとめます。

  • 代謝性アシドーシスの原因は、重炭酸イオンの不足。
  • アシドーシスを評価するには、血液検査と臨床症状。
  • アシドーシスの治療は、アルカリ化剤の静脈内投与。

こんな感じですね。

アシドーシスは子牛の主たる死亡要因になる重要な病気です。実際の現場でもよく遭遇する病気ですので、しっかりと復習して頭に入れておきましょう。

それでは、また。